今は昔 売薬歴史シリーズ 8
~ 今治水 ~前号に引き続き、今も根強く人気の続く伝統薬の“今と昔の姿とその良さ”を伝えるシリーズその八、今回も前回に引き続き外用薬の『今治水』を御紹介いたします。
◎『今治水』 = 〖新今治水〗
- 今回御紹介します伝統薬は虫歯につけて効き目のある歯痛(はいた)の痛み止めの『今治水』です。
- 現在〖新今治水〗を製造している[丹平製薬株式会社]の設立は明治27年(1894年)に創業者の森 平兵衛翁が足袋の老舗である家業を継ぎながら将来を見据えて薬学を志し薬業本舗として薬業の営業を始め大阪心斎橋に前身の[丹平商会]を設立したことにはじまります。
森平兵衛翁は明治20年代には“今すぐ治る歯の薬”として有力な売薬になっていた長川小山堂製造の『今治水』に着目、特約総販売元〔元弘(もとひろめ)〕としてその拡販や共同広告に尽力、明治28年(1895年)には『今治水』の一手専売契約を取り交わし、明治38年には製剤者の依頼により『今治水』の譲渡を受け入れ“歯痛良薬『今治水』”を[丹平商会]の丹平商品として発売しました。 - [丹平製薬株式会社]のHPによりますと、明治31年(1898年)に『今治水』の販売を開始したとのことですので『今治水』は111年以上もの歴史(一説には117年)を持つ立派な伝統薬ということになります。
- 当時の『今治水』は龍脳(りゅうのう)、丁字(チョウジ)油、甘硝石精(かんしょうせきせい)、阿仙薬(あせんやく)チンキ、エーテル精などを成分とする現在と同じようなピンセットで塗布するという使い方の、しかも当時としては斬新なガラス瓶に入った新薬でした。
- では『今治水』コレクションをご覧下さい。
(同社のその他の伝統薬『健脳丸』や『アスター軟膏』については後日、日を改めて御紹介します。)
《『今治水』A+効能書》 :ラベルには値七銭、薬剤師森平兵衛謹製、丹平商會藥房、支店東京市日本橋區箔屋町と書かれてあることから戦前の製品と 思われます。ピンセットは竹製の先が曲がっている手の込んだ日本人の器用さの感じられる一品です。 なお現代の製品には見られませんが、口を開けたポンチ絵のような絵が登録商標です。 解剖図が登録商標の太田胃散と共通した時代の雰囲気が感じられます。 |
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《『今治水』効能書B》 :小瓶二十銭、薬剤師森平兵衛、東京市などと書かれていることから『今治水』Aと『今治水』Bの中間に位置する年代の効能書と 推測されます。 |
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《『今治水』C+効能書》 :ラベルには東京都中央区日本橋通三丁目、定値金五拾圓と書かれてあることから戦後の製品です。 金属製のピンセットが付属しています。 成分が表示されていますが、ジブカインが含まれていないことから戦後の昭和27年(1952年)以前の製品と推定されます。 |
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《現代の〖新今治水〗+効能書》 :現在の〖新今治水〗の成分はチョウジ油、フェノール、カンフル、ケイヒ油、メントール 昭和27年(1952年)に成分に加えられた局所麻酔薬の塩酸ジブカインなどから成っています。 |
〔参考文献〕
・インターネット 丹平製薬株式会社HP
伝統薬ロングセラー物語
〔現代の製品提供〕
・昭島市 十字堂薬局 荻野 祥子 先生
伝統薬ロングセラー物語
〔現代の製品提供〕
・昭島市 十字堂薬局 荻野 祥子 先生
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