今は昔 売薬歴史シリーズ 26
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~ わかもと ~今も根強く人気の続く伝統薬の“今と昔の姿とその良さ”を伝える伝統薬シリーズ。
今回は『わかもと』を御紹介いたします。
◎『わかもと』 = 〖強力わかもと〗
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栄養たっぷりなビール酵母に消化酵素を生み出す麹菌、乱れた腸を整える乳酸菌を組み合わせることにより自然の恵みと天然の力が融合した消火促進作用とビタミン補給の効果をあわせ持つ〖強力わかもと〗の研究は、大正15年(1926年)の『若素(わかもと)』の研究から始まりました。
- 酵母を薬用に応用するという考えは漢方、東洋医学にも見られその代表的な生薬には“神麹(しんぎく)《写真左》”があります。
“神麹”は小麦粉、フスマ、赤小豆・杏仁・青蒿・蒼耳子などの生薬を混和して醗酵させた一種の酵母製剤で酵母、糖類、蛋白質、ビタミン類を含み健胃、消化不良に効果があるといわれ、江戸中期の後世派漢方医の香月牛山(かづきござん《写真右》)の著した民間薬書「四民急備新増妙薬手引大成」にも薬用麹である“神麹”の粉を熱い酒で服用する例が取り上げられています。
- 時代がくだり明治43年(1910年)の理研鈴木梅太郎博士のビタミンB1(オリザニン)の発見は日本人に多発した脚気の原因が白米食によるビタミンB1の欠乏症であることを証明、ビタミン時代の幕開けとなりました。
一方昭和の初期は国民の栄養状況とくに副食物の状況は悪く、国民の栄養向上が計られましたが当時のビタミンB1は高価であったため、米胚芽と酵母の研究によりビタミンBの複合体の補給源(+酵素による消化作用)としてのビール酵母が注目されるようになりました。
- 昭和4年(1929年)東京市芝公園大門に長尾欽弥氏らが合資会社「栄養と育児の会」を設立、東京大学の沢村真博士の協力を得て単一酵母を製剤化し初めての家庭薬・大衆薬である若さの素の意味をあらわす名前の『若素(わかもと)』を発売しました。
その後昭和6年(1931年)に名称は『わかもと』へと変更、昭和11年(1936年 )には米・麦などの胚芽を用いてアスペルギルス・オリノーゼNK菌を固体培養しその産生する強力な消化酵素を添加して消化力の向上を計りました。
- またアスペルギルス・オリノーゼNK菌を培養の際には酒造用麹と同じように空気中に存在する乳酸菌が自然に繁殖、その結果が下痢にも便秘にも効き目のあるという『わかもと』の不思議な効果に寄与していることが判明しました。
そこで胃腸薬として一層の整腸作用を高めるため保存性の高い活性乳酸菌の胚芽培養を行い、昭和30年(1955年)にはさらにこれを『わかもと』に添加した新製品を発売しました。
- さらに昭和37年(1962年)以降はインスタント食品の増加や偏食によって日本人の栄養摂取が偏りがちになってきたため、健康を維持するため乳酸菌数を増やし、またビタミンB1、B2、ニコチン酸アミド、ビール酵母なども加えて現在の〖強力わかもと〗が誕生しました。
- このように現在の〖強力わかもと〗は順次の改良によって、発売当初の『わかもと』よりも消化酵素や活性乳酸菌の配合により、一層強力な一剤で酵母剤・酵素剤・乳酸菌剤・栄養剤の働きを併せ持つ胃腸薬となっています。
〔平成16年(2004年)には医薬品から医薬部外品へと移行しています。〕
- では歴代の『わかもと』と、まるでおまけ博覧会のようなバリエーションに富んだ『わかもと』の景品のコレクションをご覧下さい。
(戦前) |
(戦前) |
(戦後) |
(戦前) |
戦前の物資不足 時代のもの |
(戦後) |
現在の製品 |
○「店頭ディスプレー」(戦前) :大型店舗ディスプレーです。 高さ45cm |
○「配送用外箱」 :配送用外箱にも『わかもと』のパッケージを印刷した立派な外箱です。 高さ12.5cm、幅17.5cm、奥行23cm |
◎「ガラス面用シール」(戦前)
:店頭ウインドウのガラス面に貼ったものと思われます。
◎「わかもと暖簾 吊り下げ広告」(戦前) |
◎「わかもと 店頭用のぼり」(戦後) |
☆「わかもと報国特売チラシ」(戦前) :わかもと空箱で弾丸献納とあり、空箱1個 で小銃弾1個が献納されます。____ また慰問袋に『わかもと』とあります。_ |
☆薬局経営日記より (昭和29年版・1954年) |
☆「胃の用心『錠剤わかもと』チラシ」 :よく見かける火の用心をもじった チラシです。 |
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☆「わかもと 包装紙」 :脚気、結核などの効能が 書かれてます。 |
☆「現勢欧洲大地圖-わかもとの広告入り」 (昭和14年製・1939年) |
☆昭和6年(1931年)当時の 「わかもと拡売のご案内」 |
*『胃腸榮養 わかもと』手帳(戦前)
:昭和12年(1937年)、昭和15年(1940年)当時のカレンダーがついたメモ帳です。(5種類)
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*『○○繪本』(戦前)
:わかもと本舗・榮養と育児の會發行。昭和12・13年(1937・38年)当時のものです。(6種類)
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*『御年玉』(戦前〔昭和9年(1934年)製〕) :「日常食品榮養價表」・「最新胃腸読本」各1部 |
*『ローマ字・九九の表・単位の表』(戦前) |
※『わかもと コマ』(戦前) :“わかもとのんで元氣百倍” “こまのやうに元氣よく” |
※『わかもと 鉛筆』(戦前) |
※『わかもと パラシュート』 :わかもとの絵の重しのついたパラシュートです。 |
※『錠剤 わかもと 円盤おもちゃ』(戦前) :赤・青のセロファンを使った回転式円盤おもちゃです。 |
※『錠剤 わかもと 回転双六』(戦前) :昭和13年(1938年)製 |
※『相撲めんこ』(戦前) :戦前の製品ですが、力士(小結神風)の化粧 まわしに『わかもと』のマークが入っています。 (裏面)
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※『わかもと 針セット』(戦後) |
△『最新スポーツ型 わかもと ユニホーム』(戦前) |
△『わかもと 鞄』(戦前) |
◇『携帯用容器』(戦前) |
〈おまけ〉 「錠剤 つよもと」ポスター (戦前のわかもとには 「偽造品防止のため・・・」 と書かれていますが・・・。) |
〔参考文献〕
・日本の伝統薬 宗田 一 著 主婦の友社
・名薬探訪 加藤 三千尋 著 同時代社
・家庭薬ロングセラーの秘密 薬事日報社
・我が社の伝統薬 都薬雑誌 Vol.26 No.9(2004)
・日本医学史綱要 富士川 游/小川 鼎三 平凡社
・漢薬の臨床応用 神戸中医学研究会 医歯薬出版
・薬局経営日記(昭和29年版)
・インターネット わかもと製薬HP/ウィキペディア Wikipedia
〔現代の製品提供〕
・昭島市 十字堂薬局 荻野 祥子 先生
・日本の伝統薬 宗田 一 著 主婦の友社
・名薬探訪 加藤 三千尋 著 同時代社
・家庭薬ロングセラーの秘密 薬事日報社
・我が社の伝統薬 都薬雑誌 Vol.26 No.9(2004)
・日本医学史綱要 富士川 游/小川 鼎三 平凡社
・漢薬の臨床応用 神戸中医学研究会 医歯薬出版
・薬局経営日記(昭和29年版)
・インターネット わかもと製薬HP/ウィキペディア Wikipedia
〔現代の製品提供〕
・昭島市 十字堂薬局 荻野 祥子 先生
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