ホーム新撰組と薬剤師 石田散薬プロジェクト

石田散薬の研究 ~ステップ4 完成した復刻品の,薬理調査方法について~

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~薬の理を知る。成分分析編~

成分の「特定」というものは、実は、多大な時間と金銭を必要とします。
なぜなら、「なにが入っているのかわからないもの」から「何が入っているのかを知る」ためには、「入っているはずの何か」が判らない以上、「様々な既知の物質と、同等性の実験をしてみる」必要が生じるからです。
たとえば、「箱の中に白と黒のどちらかの色の、ここにある見本と同じタイプのボールがひとつだけ入っています。どちらなのか調べてください」と言われたのなら、箱の中からボールを取り出すことさえできれば、白か黒かの色を見比べれば、箱の中身が特定できます。けれど、「箱の中に何かがいくつか入っています。それは何でしょう」と言われても、たとえ中身を取り出せたとしても、比較するものがありませんから、それが「何」なのかを証明することができません。
そこで、今回のような簡易研究では、おおよそ入っているだろう成分を予測して、その限られた範囲内で特定することになります。(予算の関係です。ファンの皆さん、すみません)

参考

今回の実験では、クロマトグラフィーという手法を使っています。

クロマトグラフィーとは「物質を管あるいは面に沿ってゆっくりと移動させることにより、その成分を分離・精製・分析すること」です。

20世紀初頭、植物学者のM.S.Tswettによる葉緑素や植物に含まれる色素分離の研究でペーパークロマトグラフィーという手法が始まっています。このペーパークロマトグラフィーでは、こよりのような形にしたろ紙の端から少し離れたところに色素の混合物を染み込ませて、その端を溶媒に浸し、色素を徐々に移動させます。色素とろ紙との吸着の度合いに応じて、混合色素は分離して、色素の点(スポット)が特性に応じて並びます。この「分離した並び度合いなどで物質を調べる」手法がクロマトグラフィーの基本です。

色素(無色も含む)を移動させた記録をとることから、Chromato-(ギリシャ語のChroma、「色」)とGraphy(ギリシャ語のGraphos、「記録」)をかけあわせて作られた造語がChromatography、というわけです。実はもうひとつ愉快なお遊びも隠されているのですが、その話はもう少し後で。

今回使われた方法のひとつが、ろ紙の代わりにシリカゲルなどの吸着剤の粉末をガラス板に塗りつけて乾かしたものを用いる方法、薄層クロマトグラフィー(TLC)です。これは簡易かつ基礎的な分析に高い効果があります。おおまかなことが判りますが、複雑なものには向いていません。

わかること、できること。(ただし、クロマトグラフィーの種類によってかなり精度は異なります)
 スポットの位置・・・物質の種類。
 スポットの濃さ(無色の場合は発色させて、その色の濃さ。放射性物質で標識すれば、その感光の強さ)・・・物質の量。

 1スポットの溶出・・・純粋な成分の分離。

粉末を平面に塗るのではなく、管に詰めて使用するタイプもあります。
粉末を詰めた管(カラム)に調べたい物質を注入します。カラムに一定の速度で液体を流しながら、流出する液体を検出器に通し、信号の強さを記録します。流れた液体の量(または時間)を横軸にとり、縦軸には信号の強さを描いたグラフができます。カラムから物質が流れ出ると、グラフにピークが出現。このピークから分析を行います。

ちなみに、1906年にクロマトグラフィー原理を発見したツウェット(Tswett)の母国はロシアです。 この分析方法をクロマトグラフィーと命名した彼の名前をロシア語で書くと「Цвет」。これはロシア語で「色」を意味します。つまり、ツウェットはユーモアたっぷりに、新発明した分析方法に「ツウェット式記録法」と名づけていたわけです。




成分分析機器です










ここでは牛額草(mizo-soba)について調べた画面を表示しています。


~動物薬理実験・「はれを知る」~

動物の皮膚の中に異物を入れることで、その箇所には「異物」に対する生体反応として「炎症」、つまり「はれ」が起こります。石田散薬の効能のひとつである「うちみ」は、皮膚や筋肉の炎症ですから、炎症の治り具合をみれば、薬として効いているかどうかがわかる仕組みです。

「はれ」の実験 『コットンペレット法』

皮膚に小さなコットンを入れることで《人工的に炎症を起こしたネズミ》に薬物を投与して、薬物による治り具合を炎症箇所の重量から統計、使用薬物間の対比を得るという実験です。
対照とする薬物は、消炎剤として「アスピリン」を用います。アスピリンは初期の消炎鎮痛剤で、効果は現代薬の中では弱い部類に入ります(現代薬はおおむね強い効果があります。その中では、弱め、という程度です)。石田散薬の服用時に用いる「酒」の効果も同時に比較するため、「酒だけを飲ませた類」と「まったく何も飲ませなかった類」もつくります。実験期間は10日間です。






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