昔はこんな薬もありました 19
~ 懐炉と懐炉灰 ~- 昔のいろいろな薬や健康器具を紹介してきた“昔はこんなものもありましたシリーズ”、今回は懐炉と懐炉灰を取り上げてみました。
以前平成15年04月号の昔はこんな薬もありましたシリーズ・その7(通巻20号)ではハクキンカイロの発展型の「ハクキン眼爐(がんろ)」(めあたため)を紹介しました。今回はその御先祖様とも言える懐炉と懐炉灰です。
- カイロは発明された時代順には
①灰式カイロ
②白金触媒式カイロ
③使い捨てカイロ(:2011年の販売数量は20億8000万枚)
④その他のレンジで温める式のカイロや電池式のカイロ、酢酸溶液と金属の反応を利用したエコカイロなど。
に大別されます。
- 「ハクキン眼爐(がんろ)」の章でも書きましたが、現在主流となっている使い捨てカイロが一般大衆に広まる一昔前まではカイロ・懐炉といえば懐炉灰を用いた懐炉(灰式カイロ)か、ベンジンを用いた懐炉(白金触媒式カイロ)のことを指していました。
白金触媒式カイロについては上記の通巻20号をお読みいただくとして今回は懐炉灰を用いた懐炉(灰式カイロ)を取り上げてみたいと思います。
- その昔、江戸時代ころまでは暖房具特に懐(ふところ)に入れて暖をとるものとして古くは火鉢などで加熱した滑石などの自然石を適度に冷ますか、布に包んで用いたり(:温石・おんじゃく)、塩や塩と糟を混ぜたものを炒って布に包んだものが使われていました(:塩温)。江戸時代の元禄初期には木炭末に保温力の強いナスの茎などの灰を混ぜたものを通気孔の開いた金属容器に密封した懐炉があったようで、木炭末に混ぜる灰としては他に下記の麻殻(おがら)や桐の灰が使われましたが、より携帯に便利で簡便に暖をとれる携帯暖房道具として明治になってから各種の携帯懐炉が発明されました。
- 麻(ヘンプ)の繊維を剥いだあとに残る木質部を麻殻(おがら)といいますが、かつての日本の人々はこのような自然の恩恵の残り部分も決して無駄にすることなく利用していました。
それが懐炉には欠かせない麻炭、懐炉灰の原料となる訳です。
国内の麻(ヘンプ)の栽培者数・栽培面積ともに国内1位であった栃木県では次のような製造工程を経て明治37年(1904年)から懐炉灰の製造が始まったと伝えられています。
・麻殻(おがら)を懐炉灰にするには次のような工程を経てゆきます。
・原料の麻殻、約30貫(約112kg)を束ね燃やして直径1mの釜にいれます。
・炎が出てしてしまわないように水をかけて蒸し焼きにします。
・・生焼けがないように棒でかき混ぜ、また水を打って火が残らないようにします。
・そして粉砕して冷ました後、袋に詰められ各懐炉灰製造業者へと出荷されます。
- コレクションには懐炉や懐炉灰のいろいろなデザインの製品が残されており、それはとりもなおさず需要も多かったことを意味していると思われます。
- なお使い捨てカイロが主流となった昨今でも灰式カイロは反応時に水を生成しないため、結露防止の用途には他のタイプのカイロより向いており、冬季や氷点下の環境における小型天体望遠鏡やカメラのレンズ表面の結露防止などの目的で使用されており、現在入手可能な灰式カイロとしては楠灰製造の「ポケットハンドウォーマー」が1機種のみあるようです。
[懐炉]
コダマ懐爐 |
七福カイロ |
びろうどの懐爐(桃太郎灰) |
菊乃友懐爐 |
楠灰懐爐 |
社交カイロ |
和洋灰敷爐 |
[懐炉灰]
金鳥灰 裏面 |
釜屋モグサ灰 裏面 |
さくら灰 裏面 |
春陽堂(懐爐灰) 裏面 |
興亜小灰 |
紙屋太灰 |
冨士卜灰 |
東菊懐爐灰(渦巻型) (:製造元は東京除中菊工業株式会社、 販売元は資生堂。) |
菊乃友渦灰 |
ミカサ懐爐灰 |
國の譽 裏面 |
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桐灰 裏面 |
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母の肌 裏面 |
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懐爐灰 裏面 |
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三共の煉灰 |
君が友カイロ灰 |
半煉製懐爐灰 |
君花煉灰 |
勤王印 固形型煉灰 |
昭和半煉かいろ灰 |
[楠灰懐爐灰琺瑯看板] |
〔参考文献〕
・インターネット『ウィキペディア(Wikipedia)』その他
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