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今は昔 売薬歴史シリーズ 6

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~ イチジク浣腸 ~


前号に引き続き、今も根強く人気の続く伝統薬の“今と昔の姿とその良さ”を伝えるシリーズその六、今回も前回に引き続き外用薬の〖イチジク浣腸〗を御紹介いたします。


◎『イチジク印軽便浣腸』 = 〖イチジク浣腸〗

  • 浣腸といいますとかつては腸からの水分や栄養補給を目的に滋養浣腸が行われていたこともあったようですが大きな効果が期待出来ず、また点滴などの輸液療法が発達したことから現在ではほとんど行われず、浣腸といいますと普通は便秘時の排便を目的としたグリセリン溶液を用いた浣腸を指しています。
    便秘以外には腸重積や腸捻転の際に行う整腹浣腸や大腸造影検査のためにバリウムを用いたバリウム浣腸などがありますが、やはり一般家庭で浣腸といいますと便秘の時の浣腸を指します。
    そして家庭用浣腸で最も名の通った製品がこの〖イチジク浣腸〗です。その誕生は今から80年以上も前の大正14年(1925年)のことで、初代社長の田村廿三郎医師の考案により製造された『イチジク印軽便浣腸』に始まります。(合資会社東京軽便浣腸製造所)
    その名前の由来は当然ながら新案登録であるイチジクの形の容器に由来する訳ですが、この形は現在の製品に至るまで変っておらず、この簡単な製品の名前と製品イメージ・形とが完全に一致したことが長寿商品になった一つの理由と考えられます。(その他にイチジクの乾実は緩下剤として用いられたり、イチジクの実が熟するのが早く、速効性を連想させるからという説もあります。)
    同社は昭和9年(1934年)にはイチジク製薬株式会社に改組、その後昭和20年(1945年)の3月には東京大空襲により墨田区平川橋にあった工場を消失、昭和22年(1947年)には現在地の墨田区東駒形に新工場を移転するのですが、コレクション(Ⅰ)は社名がイチジク製薬株式会社の、住所地が墨田区平川橋にあった当時の製品で、つまり昭和9年から昭和20年にかけての間に作られた製品と推定されます。 コレクション(Ⅳ)も戦前の製品の外箱と思われます。
    またコレクション(Ⅱ)は箱付の、住所地が墨田区東駒形とあることから、戦後の、また箱の耳に“ 類似品が沢山でています。 必ずイチジク浣腸と御指定下さい。”とあることから戦後まだ日も浅い頃の製品と思われます。 (Ⅲ)は(Ⅱ)よりもやや時代の下がった頃の製品でビニールで包装されています。

    なお現在の製品の効能・効果は“便秘”だけですが、

    コレクション(Ⅰ)に書かれています主治・効果は
      “便秘 オヨビ 便秘ヲ原因トスル嘔吐 胃痛 腸痛 頭痛 瓦斯膨満 耳鳴 眩暈 ヒキツケ 及 痔疾”
    コレクション(Ⅱ)に書かれています主治・効果は
      “便秘 オヨビ 便秘ヲ原因トスル発熱 ヒキツケ 頭痛 ガス膨満 眩暈”

    で、いずれも漢方・傷寒論でいうところの陽明病期をも含んでいると思われるなど現在のそれより幅広いものだったようです。
(Ⅰ)
(Ⅱ)
(Ⅲ)

イチジク浣腸
(Ⅰ)と(Ⅱ)では包み方が上下逆です。
(Ⅱ)はパラフィン紙、(Ⅲ)はビニールで包んでいます。また包が上下逆です。
(Ⅳ)10個入の外箱
現代の製品
イチジク浣腸
イチジク浣腸
イチジク浣腸
薬局経営日記より
「イチジク浣腸」広告
昭和29年版



〔参考文献〕
・インターネット  イチジク製薬株式会社HP
・インターネット  フリー百科事典
          「ウィキペディア Wikipedia」より

〔現代の製品提供〕
・昭島市 十字堂薬局  荻野 祥子 先生


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