今は昔 売薬歴史シリーズ 12
~ 龍角散 ~今も根強く人気の続く伝統薬の“今と昔の姿とその良さ”を伝える伝統薬シリーズ12回目、今回は『龍角散』を御紹介いたします。
◎『龍角散』 = 〖龍角散〗
- この“今は昔売薬歴史シリーズ”では、すでに十種類以上の伝統薬を御紹介してきましたが、今回の〖龍角散〗は厳格に剤形を守り、パッケージの雰囲気もほとんど変らないというまさに伝統薬の権化のような薬です。
- 昭和28年(1953年)の民放TV放送開始の時に生まれた“ゴホン!といえば、龍角散”のキャッチフレーズで有名な〖龍角散〗が誕生したのは定かな記録はないようですが、今から200年近くも昔の江戸中期、文政年間(1818年~1829年)と伝えられています。
『龍角散』は当時東北地方の雄藩、現在の秋田県地方にあった佐竹藩20万石の藩薬として御典医であった藤井家の玄淵によって創製され誕生しました。 二代目の玄信は蘭学を学び初代の『龍角散』に西洋の生薬を取り入れるなどの改良を計ったようです。
- さらに明治初期、三代目藤井正亭治医師が藩主佐竹義堯侯の御殿医であった時、藩主の喘息の持病を治すために長崎で蘭学を学び、藩薬であった『龍角散』を喘息の処方に改良し、現在の〖龍角散〗処方の基礎を作り『龍角散』という名称もこの時に名づけられました。
現在の処方には含まれていませんが、当時の処方には鎮静作用のある龍骨、消炎・去痰作用のある龍脳、熱を去り腫れをとる鹿角霜が含まれており『龍角散』という名前はこれらの生薬に由来するようです。(龍脳は現在の〖龍角散〗にも香料として含まれているようです。)
- その後、明治維新により廃藩置県が行われると藩薬『龍角散』は藤井家に下賜され、旧主とともに上京した藤井家は旧佐竹藩の江戸屋敷近くの神田豊島町に居を構え薬種御用商となりました。
さらに現東京大学の薬学部の前身にあたる衛生研究所で製剤技術などを学んだ薬剤師でもある四代目の藤井得三郎氏はさらに改良を加え、現在の〖龍角散〗の大きな特徴である細かい微粉末状の製剤を生み出しました。
つまり〖龍角散〗の大きな特徴は漢方薬の一剤型である吹薬 (すいやく)である点にあり、水なしで服用して微粉末を直接のどの粘膜に広く作用させることで咳を鎮め、痰を切り、のどの炎症を鎮めることにあります。
また〖龍角散〗の桔梗、杏仁、甘草の和漢薬3種類と西洋生薬セネガの組み合わせは複数の研究機関においてもベストの組み合わせとのお墨付きをいただいているようです。
そして明治26年(1893年)には藤井得三郎氏は藤井得三郎商店を開設して販路を日本全国に展開し現在の基礎を作り上げたわけです。
- 本項の最後に〖龍角散〗を詠んだと推測される川柳を御紹介したいと思います。
‘飲みかけた散薬を手に笑うわすな’ - では『龍角散』コレクションをご覧下さい。
《各種『龍角散』》
:戦前から戦後にかけての製品で最も古いコレクションの『龍角散』の容器はアンチモン製の重厚なものです。(直径4cm 厚さ1.5cm 重さ約50g)
また戦前の製品には製造元が“調剤本舗 藤井得三郎”とあり、戦後のものも“株式会社 藤井得三郎商店”とあり“株式会社龍角散”となる昭和39年、1964年以前の製品と推測されます。
《『龍角散』メモ帳》
:対米英戦争の始まる昭和15年(1940年)のもので、英国バッキンガム宮殿の衛兵が描かれています。
《『龍角散』小型紙芝居》
:子ども用に配られた紙芝居のオモチャですが、戦車の絵や“隣組み”の歌詞が書かれており戦時中のものです。
《『龍角散』大特売規定チラシ》
:年代は特定できませんが大正~昭和初期と思われます。
《『龍角散』効能チラシ2種 (A)(B)》
:裏面は(C)で共通しています。
《『龍角散』ストラップ》
:戦前から戦後にかけての製品で最も古いコレクションの『龍角散』の容器はアンチモン製の重厚なものです。(直径4cm 厚さ1.5cm 重さ約50g)
また戦前の製品には製造元が“調剤本舗 藤井得三郎”とあり、戦後のものも“株式会社 藤井得三郎商店”とあり“株式会社龍角散”となる昭和39年、1964年以前の製品と推測されます。
《『龍角散』メモ帳》
:対米英戦争の始まる昭和15年(1940年)のもので、英国バッキンガム宮殿の衛兵が描かれています。
《『龍角散』小型紙芝居》
:子ども用に配られた紙芝居のオモチャですが、戦車の絵や“隣組み”の歌詞が書かれており戦時中のものです。
《『龍角散』大特売規定チラシ》
:年代は特定できませんが大正~昭和初期と思われます。
《『龍角散』効能チラシ2種 (A)(B)》
:裏面は(C)で共通しています。
(A) |
(B) |
(C) |
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《薬局経営日記 昭和29年版より 『龍角散』広告》 |
《『龍角散』粗品 シャープペンシル》 |
《現代の製品》 |
《『龍角散』ストラップ》
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〔参考文献〕
・日本の名薬 山崎 光夫 東洋経済新聞社
・伝承薬の事典 鈴木 昶 東京堂出版
・日本の伝統薬 宗田 一 主婦の友社
・名薬探訪 加藤 三千尋 同時代社
・インターネット フリー百科事典『ウィキペディア Wikipedia』
・インターネット 株式会社龍角散HP
〔現代の製品提供〕
・昭島市 十字堂薬局 荻野 祥子 先生
・伝承薬の事典 鈴木 昶 東京堂出版
・日本の伝統薬 宗田 一 主婦の友社
・名薬探訪 加藤 三千尋 同時代社
・インターネット フリー百科事典『ウィキペディア Wikipedia』
・インターネット 株式会社龍角散HP
〔現代の製品提供〕
・昭島市 十字堂薬局 荻野 祥子 先生
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