今は昔 売薬歴史シリーズ 21
~ ブロン・改源・コルゲンコーワ ~『エスエス ブロン』 = 〖新ブロン液エース〗
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OTC(大衆薬)のなかでは最も売れている咳止め(鎮咳剤)と思われます。
以前の30mℓの〖ブロン〗はdl-塩酸メチルエフェドリンとリン酸ジヒドロコデインを含む味もよい製品でした。 一方薬物乱用でよく名前の聞かれるスピードボールとはアップ系とダウン系の組み合わせでその典型はコカインとヘロインですが、そのような組み合わせに似たエフェドリンとコデインの組み合わせであった以前の〖ブロン〗は一気に飲める量とよい味でもあることから薬物乱用の対象となりました。 その後改良が加えられエフェドリンが除かれ現在の〖新ブロン液エース〗となりましたが、現在でも成分コデインの乱用のため出荷制限や販売制限が設けられ一人一本に限られています。
一方コレクションの『エスエス ブロン』は戦後まもなくの製品と推定されますが、その主成分などを外箱や添付文書を読んで見ますと、かつての『ブロン』はエフェドリンやコデインとは無縁の製剤だったことが判ります。(一部を引用してみます。)
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“その主成分はクレオソートから精製せられたるクレオゾールスルホン酸カルシウム(:石灰溶液)にて、局所の炎症を
速やかに去り特有の鎮咳、去痰両作用が相協力して強力なる消炎、鎮咳、作用を発揮ししかもシロップ製剤故に甘
くて服し易し家庭薬であります。”
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クレオゾールスルホン酸カルシウム以外にはパラオキシ安息香酸エチルと蜂蜜又はシロッ(サッカリン又はズルチン)が含まれています。
その効能は“気管支カタル、百日咳、喘息、感冒、流行性感冒、結核、肋膜炎のせき”で、せきの摂生として“胸部に湿布をなさい。 辛いものを食べないように。適当な藥で吸入をすること。百日咳の時は「ワクチン」の注射をなさい。”等の注意が親切に書かれており、“連用するも副作用はありません。”と書かれています。
『エスエス ブロン』 〖新ブロン液エース〗
『美味 改源』 = 〖改源 カイゲン〗
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生薬配合のかぜ薬〖改源 カイゲン〗を製造している株式会社カイゲンは現在では大阪市堺市に本社を置く堺化学工業の傘下に加わっていますが、その創業は大正13年(1924年)にまでさかのぼります。
もともとは同社は創業者の中西武五郎翁が神戸で家庭用薬品卸業の「中西武商店」としてスタートしたのが始まりですが、“改源”はこの当時から販売されていたとのことで、“改源”の名前は中国古典の孟子の「既○幡然改故源源○来」(幡然として改め、源源として来る)に由来しているとのことです。
その包装に“新案特許神戸中西武商店専売”と印刷されたコレクションの『美味 改源』はその成分は生薬の桔梗根、防風、緑茶、木香、桂皮、甘茶、甘草、薄荷、龍脳、麝香各末にカンフル、アセトアニリドですが、現在の〖改源 カイゲン〗も一部の成分は変更がありますが生薬を配合した抗ヒスタミン薬を含まない風邪薬、眠くならない風邪薬という点を売り物にしています。 また〖改源 カイゲン〗のユニークな特徴は、若い薬剤師では綺麗に包めそうにない現代では珍しくなった5角形の紙の薬包紙に包まれている点です。
さらにコレクションの『美味 改源』には“お茶で飲む新式熱痰咳剤”と書かれていますが、現代の〖改源 カイゲン〗も用法には“茶湯又は湯水で服用”と書かれており、〖改源 カイゲン〗は現代にあってはユニークな風邪薬といえそうです。
なお〖改源 カイゲン〗は俵屋宗達の傑作「風神雷神図屏風」の風神をモチーフにした風邪の神様をキャラクターにしており、見てはいないのですが大阪道頓堀の戎橋(えびすばし)に「かぜに改源」の風神のイラストのネオンサインを掲げているそうです。
『美味 改源』 〖改源 カイゲン〗 風神
『コルゲンコーワ錠』 = 〖コルゲンコーワIB透明カプセル〗
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“興和新薬株式会社”→“興和株式会社”→“興和創薬株式会社”へと商号を変更してきた同社はもともとは明治27年(1894年)に綿布問屋“服部兼三郎商店”として名古屋市中区で創業されたのが始まりで、その後“株式会社服部商店”へ、昭和18年(1943年)には“興服産業株式会社”へと商号が変更、昭和29年(1954年)に“興和新薬株式会社”を設立、商号変更したものです。
“興和”というと一般には、また特に薬剤師には製薬メーカーのイメージがありますが、繊維・機械・建材・木材をはじめとする生活関連物資などの輸出入を行っておりまた放送・映像機器の製造・販売・輸出入などの事業も行っている総合商社です。
現在同社の医薬品・医薬部外品の商品には「コルゲン コーワ」「キャベジン コーワ」「パニオン コーワ」「バンテリン コーワ」「ケラチナミン コーワ」「レスタミン コーワ」「キューピーコーワ」のようにすべて「コーワ」の名前がついているようですが、コレクション(1)の『コルゲンコーワ錠』はその命名の元祖的な商品で、製造元が“興服産業株式会社”販売が日本橋の株式会社中村瀧商店の製品であることから昭和20年代の商品ではと推定 されます。
その価格は不明ですが、(應用)として“かぜ、はなかぜ、頭痛、神経痛、ロイマチス”が書かれています。
またコレクション(2)の『コルゲンコーワ錠』は製造元が“興服産業株式会社”、販売元が“興和新薬株式会社”となっている20錠100円の商品で、(効能)には“かぜ、はなかぜ、頭痛、頭重”が書かれており昭和30年代の商品と思われ、この『コルゲンコーワ錠』の効能書には“感冒の根本治療にコルゲンコーワ錠は、カゼの根源に作用する全く新しい薬効をもった治療薬であり予防薬です。”と書かれています。
現代のコルゲン コーワには錠剤の他カプセル剤、顆粒、液剤とこのような透明カプセル製剤があり咳止め、トローチ、うがい薬など“コルゲン コーワ”はかぜ関連薬の総合ブランド名となっている。
『コルゲンコーワ錠』(1) 『コルゲンコーワ錠』(2) 〖コルゲン コーワ IB透明カプセル〗
〔参考文献〕
・インターネット フリー百科事典 『ウィキペディア Wikipedia』
・インターネット 各社HP
・戦時広告図鑑 町田 忍 著 WAVE出版
〔現代の製品提供〕
・昭島市 十字堂薬局 荻野 祥子 先生
・インターネット フリー百科事典 『ウィキペディア Wikipedia』
・インターネット 各社HP
・戦時広告図鑑 町田 忍 著 WAVE出版
〔現代の製品提供〕
・昭島市 十字堂薬局 荻野 祥子 先生
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