おき薬紹介シリーズ 9
組合・クミアイ家庭薬
組合という言葉を聞きますと、普通ではまず労働組合(労組)を連想すると思います。
人によっては健康保険組合(健保)や信用組合金庫(信金)などが頭に浮かぶこともあるかもしれませんが、今回の『組合・クミアイ』は農業協同組合(農協)のことを指しています。
農協とは農家や小規模な農業法人によって全国的に組織された協同組合で、農業協同組合法という法律に基づいてその事業内容が規定されています。
全国農業協同組合中央会が組織する農協グループをJAと称しており現代では農協=JAという呼称が一般には通用しているようです。このJAの行っている事業は本来の農業生産・流通の分野ばかりでなく金融、生命保険、厚生・保健事業(病院・診療所)など総合的、多岐にわたっています。
今回ご紹介します『組合家庭薬・クミアイ家庭薬』はこのような農協の行ってきた厚生事業の一分野としての組合員、つまり農家の人達の健康を守るため脈々と続いてきた配置家庭薬システムを使った普及事業と言えるかと思います。
正確な歴史は定かでないのですが、その流れをたどると次のような歴史があるようです。
- *大正8年(1919年)
- 島根県に端を発した産業組合保健運動がいわゆる農協が家庭薬を取り扱った第一歩だったようです。
- *大正12年(1923年)
- (旧)全購連(:現在の農協)が創立され、保健関連品目として家庭薬の取り扱いが開始されました。〖つまり農協の家庭薬は100年の歴史があるということになります。〗
- *昭和11年(1936年)
- 産業組合中央会により農村保健運動が取り上げられ、産業組合青年連盟による「家庭薬全戸常置運動」によって「10銭家庭薬」の愛称が生まれました。
- *昭和17年(1942年)
- 戦局の悪化のため(旧)全購連による家庭薬取引メーカーの統合が行われ、全国製薬株式会社が発足しましたが、昭和20年(1945年)には空襲によって工場が消失、生産体制が崩壊しました。
- *昭和22年(1947年)
- 戦後になって協同薬品工業(株)、富士製薬(株)、暁生産(株)等により生産供給体制の強化がはかられました。
- *昭和26年(1951年)
- 生産メーカーは協同薬品工業(株)に一元化され従来の予約注文から現行の配置販売方式となり現在に引き継がれることになります。
現在では『クミアイ家庭薬』の配置戸数は約150万戸とのことですが、昨今のような医薬品を含めた圧倒的な物流状況が生まれる以前の特に大正期から戦後の高度成長期以前までの時代では、その恩恵を受けた農家は膨大な数にのぼると思われ、そのようなことを思い浮かべながら100年に及ぶこれらの農協の家庭薬の歴史コレクションをご覧下さい。
[その1 戦前の『組合家庭藥』時代]
(1)『組合家庭藥』保管箱〈戦前〉(全國購買組合聯合會)
:家庭常備薬詰合せ。蓋の裏面に家庭藥の一覧表や注意が書かれています。
戦前の品物です。
(2)『組合家庭藥の用ひ方と病気の手當法』醫學博士小田俊三述〈戦前〉
:後頁には組合家庭藥の一覧表が書かれています。
責任保證全國購買組合聯合會
(3)『組合家庭藥』時代の製品各種
(:戦前の製品で(1)(2)の時代の製品です。時代を反映して『組合あかぎれ膏』『組合吸出し膏』『組合婦人藥』などの製品もありました。)
[その2 戦後の『クミアイ組合家庭薬』時代]
(4)『クミアイ家庭薬』保管箱〈戦後〉
(全購連 県経済連 町村農業協同組合)
:戦後の品物でJAの以前に使われた農協のマークが描かれ、
共存、同栄の文字が描かれています。
(5)『クミアイ家庭薬』預け袋〈戦後〉
(全国購買農業協同組合連合会
/縣経済販購農業協同組合連合会
/市・町・村農業協同組合)
:同じく戦後の預け袋でJAの以前に使われた農協のマークが描か
れています。
裏面に“農協へ 貯蓄する村 伸びる村”の標語が書かれています。
(6)『クミアイのくすり』お面
:キリンがマスコットだったようです。
(7)『クミアイ』ホーロー看板
(8)『クミアイ家庭薬』時代の製品各種
(:戦後の製品で(4)(5)(6)の時代の製品です。)
『クミアイ腹痛錠』
『クミアイブルー仁丹ハミガキ』は森下仁丹と提携して作られていた歯みがきで珍品です。
(1)『組合家庭藥』保管箱〈戦前〉(全國購買組合聯合會)
:家庭常備薬詰合せ。蓋の裏面に家庭藥の一覧表や注意が書かれています。
戦前の品物です。
:後頁には組合家庭藥の一覧表が書かれています。
責任保證全國購買組合聯合會
(:戦前の製品で(1)(2)の時代の製品です。時代を反映して『組合あかぎれ膏』『組合吸出し膏』『組合婦人藥』などの製品もありました。)
『組合頭痛錠』 |
『組合解熱錠』 |
『組合せき藥』 |
『組合胃腸錠』 |
『組合下剤』 |
『組合腹痛錠』 |
『組合皮膚藥』 |
『組合外傷藥』 |
『組合吸出し膏』 |
『組合婦人藥』 |
『組合ふり出し藥』 |
『組合共榮丸』 |
『組合体驅虫錠』 |
『組合目藥』 |
『組合あかぎれ膏』 |
『組合下痢止』 |
『組合痔疾座藥』 |
(4)『クミアイ家庭薬』保管箱〈戦後〉
(全購連 県経済連 町村農業協同組合)
:戦後の品物でJAの以前に使われた農協のマークが描かれ、
共存、同栄の文字が描かれています。
(5)『クミアイ家庭薬』預け袋〈戦後〉
(全国購買農業協同組合連合会
/縣経済販購農業協同組合連合会
/市・町・村農業協同組合)
:同じく戦後の預け袋でJAの以前に使われた農協のマークが描か
れています。
裏面に“農協へ 貯蓄する村 伸びる村”の標語が書かれています。
(6)『クミアイのくすり』お面
:キリンがマスコットだったようです。
(7)『クミアイ』ホーロー看板
(8)『クミアイ家庭薬』時代の製品各種
(:戦後の製品で(4)(5)(6)の時代の製品です。)
『クミアイ頭痛錠』 |
『クミアイ頭痛錠』 |
『クミアイ強力頭痛錠』 |
『クミアイせき薬』 |
『クミアイせき薬』 |
『クミアイセキドメ』 |
『クミアイ解熱錠』 |
『クミアイ腹痛錠』 |
『クミアイ腹痛錠』
『クミアイ下痢止』 |
『クミアイ駆虫錠』 |
『クミアイ虫下し』 |
『クミアイまくり湯』 |
『クミアイ下痢止』 |
『クミアイ化學目藥』 『クミアイブルー仁丹ハミガキ』 |
『クミアイクミアイ軽便浣腸』 |
『クミアイブルー仁丹ハミガキ』は森下仁丹と提携して作られていた歯みがきで珍品です。
〔参考文献〕
・協同薬品工業(株)HP
・JA全農(全国農業協同組合連合会)HP
・インターネット『ウィキペディア(Wikipedia)』
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