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石田散薬の研究 ~ステップ0 石田散薬の紹介~

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~石田散薬とは~

新選組の副長をつとめた土方歳三の生家は、今の東京都日野市石田、当時の石田村にありました。
この土方家に伝わる、打ち身・接骨・捻挫・筋肉痛・切り傷の薬が、石田散薬です。石田村の散薬だから石田散薬、なのかどうかは伝わっていません。 創薬に関しては、1700年代初頭(宝永年間。1704~1711)に土方家当主の枕元にたった河童明神から口伝されたという浪漫溢れる逸話が残っています。

また、土方家に伺ったところによると「ガマから教わった」とおじいさんの土方隼人が話していたということです。
土方歳三資料館
土方歳三資料館

このどちらの説も、当時の薬の宣伝法(神様や超自然をもちだす)により言われていたことですから、実際は代々伝わる人間の作った薬なのでしょう。

ちなみに土方隼人は世襲名で、代々の当主が「土方隼人(ひじかた はやと)」と名乗っています。 土方歳三の変名として有名な「内藤隼人」も、ここからきていると思われます。(「内藤」は徳川家康に使えた忠臣)

宝永年間の主な出来事

 柳沢吉保が大老でした。
 生類憐れみの令が廃止になりました。
 新井白石が幕臣に取り立てられました。
 宝永の大地震(M8.4相当?)が起きました。
 宝永の富士山大噴火が起きました。

服用量は、1匁(いちもんめ。3.75gです)を一服あるいは一日量として、熱燗の日本酒で飲む(お酒で飲まないと効かない)、となっています。

また、子供はその三分の一を服用することになっています。

様々な服用量

使用法に関しては、いくつかの方法があるようです。
飲み薬として使用する場合、上記の1匁を1服あるいは1日量を酒で飲むという方法の他にも、
「大人1日1回1包、小人1日2回2分の1包。酒で飲む。白湯でも可」
という記述も残されています。(明治期の服用法説明より)

土方康さんの名前で書かれた「石田散薬の宣伝文」によると、日清・日露戦争の兵士も使っていたということです。(→参考:「松本良順の書いた本」)

日野のお年寄りの談話によると、「満州事変のときも使った」とのことです。

ただ、「効くっていう話しはついぞ聞いたことがない」ようなので、残念です。

石田散薬の値段

石田散薬は、いったいいくらで売っていたのでしょうか。
明治の売価は「1包20銭」だったようです。 少しピンときませんね。
同時期に売られていて、今でも目にすることのできるクスリに「大学目薬」(参天)があります。
大学目薬1瓶の売価は、石田散薬1包と同じ20銭でした。
この当時の20銭は「かなり高い部類に入っていた」ようです。
参考までに、年代別での20銭で買えるものを挙げておきます。
明治2年「飯田町の土地1坪」、明治3年「ビール1本」、明治10年「レモン水小瓶」、明治43年「ビフテキ」、大正10年「アイスクリーム1個」
(ちなみに、大正10年の国会議員の年棒は3000円でした)

大雑把に、石田散薬一包が現代の「1000円~2000円」くらいだと考えると判りやすいかもしれません。
飯田町の土地と考えると高すぎますので。

第二次世界大戦後の昭和二十三年(西暦では1948年)頃までは土方家で製造されていましたが、薬事法の改正(昭和23年)に伴い、調査実験の方法などは不明ですが、国から無効無害という調査結果が示されたそうです。 (→検証)ちなみに、今回の研究で用いられる液体クロマトグラフィー分析やNMR解析の技術は、まだ当時開発されていませんでした。

昭和23年当時の分析法

昭和23年の分析技術は定性反応(未知の物質に特定の操作をしたときに、物質Aだけに現れる反応が起こる場合、未知の物質を物質Aだと確定することができます。それを利用したシンプルな分析方法です)が中心です。

当時の担当官庁からは「効果のある別の成分(新薬)を混ぜれば、販売を続けてもいい」あるいは「薬効を信じている人にだけ少量配付する分には構わない」旨の通達があったようですが、家伝薬ということで、製法原料を変えてまで続けたくないとの意向などから、土方家では製造を中止しています
製造中止した後も使いつづけていた人がいたらしく、昭和四十年代に、「石田散薬でないと効かないから」と、祖母の頼みで購入依頼にやってきた方がいらしたそうです。

現在は、土方家に残された五十年以上前の薬品が、黒い粉末として現存するのみです。

(日野市の「新撰組フェスタひの」に来場された方の中に、保管していた「石田散薬を持参した方がいたようです)



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